トリのマーク(通称)は場所から発想する演劇をつくっています

これがわたしたちの名前です。発音はできません。
どうぞ好きな呼び方で呼んでください



山中正哉光原百合さん→三上その子さん→曽我高明さん→柳澤明子

 

場所の力、空間の力 

*************************************

                    作家・演出家◇山中正哉 

 

「風もなく、陽射しが暖かくて、うとうとしていたら、いつの間にか芝居が始まっていました」

これは、私たちの公演にいらしていただいたお客さまの書いたアンケートの一節。

表参道・同潤会アパートの裏手にある一軒家の庭で秋の晴れた午後に行った野外劇の感想です。大通りから少し住宅地に入っているので、あまり車の音が届かず、鳥の声もよく聞こえ、親しい人の家の庭でくつろいでいるような気分になったのでしょう。同じような感想を複数のお客さんからうかがいました。私たちはそんな風景を観ていただきたくて、芝居をつくっています。

 公演場所を決めるポイントは、まず「自分たちが観客として坐ってみたいところ」。

ですから、最も重要になるのが、場所選びです。芝居の公演といえば、上演したい脚本があり、それから劇場を探すのが普通でしょうが、私たちはまず場所を探すところから始めます。

例えば、池袋の雑司が谷墓地を抜けたところにある旧宣教師館。ここは豊島区の有形文化財に指定されている建物ですが、二十世紀のはじめ、アメリカ人宣教師が住んでいた西洋館をそのまま保存したものです。一般に開放されているその庭に坐り眺めているうちに、そのたたずまいにひかれ、上演する話が浮かび、三年越しの交渉の末、その建物を背景として前庭で公演をすることができました。

このように、公演場所はそこに坐ったときに、完成した芝居のイメージが浮かんでくるかどうかで、決まってしまっているのです。

もちろん、私たちは姿のよい建築物を借景にした野外でだけ公演を行う訳ではありません。野外は天気が心配です。旧宣教師館の公演のときも、前日まで台風の影響で天気が悪く、不安でしたが、当日は台風も逸れ、雲のない暖かい日でほっとしました。しかし、天気の心配ばかりしていたのでは、身がもちません。

ですから、次にポイントになるのは、「外の見える空間」での公演ということになります。

劇場の中には窓がありません。照明効果を考えれば、劇場内部に窓など作れるわけがないのは、当り前の話です。でも建築物で窓のないものは特殊なものです。窓がなければ、息苦しい。天気はどうなのか、外はどうなっているのか、もう暗くなっているのか、そんなことも分らない。

「そういう日常の時間を忘れさせてくれるのが演劇だ」と言われてしまえば、その通りなのですが、演劇がそれだけしかないのも寂しい気がするのです。昔から野外劇もあるのですから、外の風景が見える芝居があっても良いのではないだろうか。

そんなことを考えていたとき、知人に紹介していただいたのが、東京の郊外、武蔵小金井の閑静な住宅地にあるギャラリーでした。それは、直方体に円筒をのせたコンクリート打ちっぱなしの天井の高い建物で、縦1m、横3mの大きなガラス窓の外に坪庭が見えるのです。中に入った途端に、芝居の構想がふくらみ、すぐに公演させてもらうことに決めました。それ以来、そのギャラリーで何回か公演を行っているのですが、あるとき、公演の前日に雪が降り、芝居の背景が雪景色になってしまったことがありました。電車が止まったり、公演会場まで歩きにくかったりでお客さまは大変だったと思うのですが、「窓から見えた雪景色が芝居の内容を印象深くした」というアンケートを読んだときには、ほっとしました。

こうやって、私たちは他にも、街の見えるギャラリー、美術館、倉庫を改造した空間などで「場所の力、空間の力」を借りながら、公演を行ってきました。まだまだ私たちの知らない面白い建築物があちこちにあることでしょう。冒頭のアンケートの末尾にはこう書いてあります。「ゆったりとした贅沢な時間をすごすことができました。」そんな時間をつくるために、想像力を刺激してくれる空間を探しているのです。

 

************************************************

この原稿は1999年のビルメンテナンス誌に掲載

 

 

 

このページのTOPへ


|HOME| |活動について| |公演風景| | |お問い合わせ|

|メディアでの御紹介| |ブログ| 


131-0032東京都墨田区東向島1-23-14
このホームページに掲載の写真、イラスト、文章を許可なく使用することを禁じます
 copyright(C) all righits reserved